それでも我々は戦っていく 【読感】なれるSE!16
物語についてはちゃんと大風呂敷が広がって、いよいよ業界全体の再編にもつながるところまでやってきた。
政略的レイヤーからの話が続き、物語としてきちんと盛り上がりを見せ最後は大団円。
大団円?
最後の工兵の姿に対してほっとした一方で、なんともいえない後味の悪さが残った。
おそらくその後味の悪さは本編中とあとがきにてつきつけられる本邦IT業界への絶望感ゆえであろう。
「IT系のスキルが重要なんて誰も本気で思っちゃいないからだ」
アルマダ社長のローズの言葉はあまりにも苦くて重い。
現実として、そのようなIT会社・IT部門の姿というものを自分はよく知っている。
「結局みんな技術なんて好きじゃないんだよね? ITという名のつく会社でサラリーマンやってるだけなんだよね?」
著者夏海さんの問いかけが胸に突き刺さる。
それらを踏まえた上でこうも思う。
「だからどうした?」
と。
業界自体についてはそうかもしれない、ダメな会社はダメなままかもしれない。
だからといってそこにいる自分を否定したりだめ出ししたりする必要もない。
工兵の姿が魅力的なのは、業界に対する諦観は別として自分自身もそういった戦い方を続けたいからなのではないかと思う。
みんなできてないからもうダメだ、という前に自分くらいは戦ってみてもいいじゃないか。
そんな気持ちが中年のおっさんにも持ち上がってきた。
ホントこのシリーズはひねくれた応援歌だとつくづく思う。
本編を最後に締めるあるプロジェクトマネージャーの箴言も、あとがきを締める作者のエピソードも、心を揺さぶられずにはいられない。
軽い気持ちで手に取った本シリーズだが、結果として節目節目でエンジニアとしての自分というものを見つめ直すきっかけとして座右にあり続けそうだ。
完結お疲れ様でした。
……次はガーリーエアフォースが完結する感じかなあ?
| 固定リンク
コメント